行持 上(33)

のちに杭州(コウシュウ)塩官斉安国師(エンカン サイアン コクシ)の会(エ)にいたりて、書記に充(ジュウ)するに、黄檗禅師(オウバク ゼンジ)、ときに塩官の首座(シュソ)に充す。ゆゑに黄檗と連単なり。

宣宗は、後に杭州の塩官斉安国師の道場に行って書記に当てられましたが、黄檗禅師は、その時 塩官の首座(修行僧の頭)に当てられていました。そのために、宣宗は黄檗と僧堂で席を並べていました。

黄檗ときに仏殿にいたりて礼仏(ライブツ)するに、書記いたりてとふ、
「仏に著
(ツ)いて求めず、法に著いて求めず、僧に著いて求めず、長老 礼(ライ)を用いて何にかせん。」

黄檗がある時、仏殿に行って仏を礼拝していると、書記の宣宗が来て尋ねました。
「仏に執して求めることなく、法に執して求めることなく、僧に執して求めることがないのなら、長老は何のために礼拝しているのですか。」

かくのごとく問著(モンジャク)するに、黄檗 便掌(ビンショウ)して、沙弥(シャミ)書記にむかいて道(ドウ)す、
「仏に著いて求めず、法に著いて求めず、僧に著いて求めず、常に如是
(ニョゼ)の事を礼す。」

このように尋ねると、黄檗はすかさず平手打ちして沙弥の書記に言いました。
「仏に執して求めることなく、法に執して求めることなく、僧に執して求めることなく、いつもこのように礼拝しているのだ。」

かくのごとく道(ドウ)しをはりて、又 掌(ショウ)すること一掌す。書記いはく、「太麁生(タイソセイ)なり。」

そう言って、また平手打ちしました。書記は「荒っぽいな。」と言いました。

黄檗いはく、「遮裏(シャリ)は是れ什麽(ナニ)の所在なれば、更に什麽(ナニ)の麁細(ソサイ)をか説く。」

そこで黄檗が言うには、「ここにどんなことがあって、荒っぽいとか親切とかを言うのか。」

また書記を掌すること一掌す。書記ちなみに休去(キュウコ)す。

そしてまた書記を平手打ちしました。書記はそこで黙りました。

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