帰依三宝(7)

(きえ さんぼう)

  世尊在世(セソン ザイセ)に、二十六億の餓龍(ガリュウ)、ともに仏所に詣(ケイ)し、みなことごとくあめのごとくなみだをふらして、まうしてまうさく、

世尊(釈尊)が世にありし時に、二十六億の飢えた竜が、ともに仏の所にやって来て、皆 雨のように涙を降らせて仏に申し上げた。

「唯(タダ)願はくは哀愍(アイミン)して、我を救済(グサイ)したまへ。大悲世尊、我等 過去世の時を憶念(オクネン)するに、仏法の中に於て、出家することを得(ウ)と雖(イエド)も、備(ツブ)さに是(カク)の如くの種々の悪業(アクゴウ)を造(ツク)れり。悪業を以ての故に、無量の身を経て三悪道に在(ア)り。亦(マタ)余報を以ての故に、生じて龍の中に在りて極大苦(ゴクダイク)を受く。」

「どうか哀れみを垂れて、我等をお救いください。大慈悲の世尊よ、我等は過去世を思い起こすと、昔、仏法の中に出家することが出来たけれども、皆このように色々な悪業(悪報いを受ける因縁)を作りました。この悪業のために、生まれ変わり死に変わり無量の身を三悪道(地獄、餓鬼、畜生)の中に送りました。また残りの報によって竜の中に生まれ、極大の苦を受けています。」と。

仏 諸龍に告げたまはく、
「汝等 今 当
(マサ)に尽(コトゴト)く三帰を受け、一心に善を修(シュ)すべし。此(コ)の縁を以ての故に、賢劫(ケンゴウ)の中に於て、最後の仏に値(ア)ひたてまつらん。名づけて楼至(ルシ)と曰(イ)ふ。彼(カ)の仏の世に於て、罪 除滅(ジョメツ)することを得ん。」

仏は、竜たちに話した。
「お前たちは、今から皆 三帰(仏陀 仏法 僧団への帰依)を受けて、一心に善行を修めなさい。この因縁によって、お前たちは賢劫(千仏の賢者が出現するという現在の世界)の中で、最後の仏に出会うことであろう。その名を楼至といい、その仏の世で、お前たちの罪は消滅するであろう。」と。

時に諸龍等、是の話を聞き已(オワ)りて、皆 悉く至心(シイシン)に、其(ソ)の形寿(ギョウジュ)を尽すまで、各(オノオノ)三帰を受く。」

その時に竜たちは、この話を聞き終わると、皆 真心でもって、その命の尽きるまで、おのおの三帰を受けた。」

  ほとけみづから諸龍を救済(グサイ)しましますに、余法なし、余術なし、ただ三帰をさづけまします。過去世に出家せしとき、かつて三帰をうけたりといへども、業報(ゴッポウ)によりて餓龍となれるとき、余法のこれをすくうべきなし。このゆゑに、三帰をさづけまします。

  ここで仏は、自ら竜たちを救済されるのに、ほかの方法や術ではなく、ただ三帰を授けられたのです。この者たちは、過去世で出家した時に三帰を受けていたのですが、悪業によって飢えた竜となった時には、ほかの法でこれを救えるものがありませんでした。そのために、仏は三帰を授けられたのです。

しるべし、三帰の功徳、それ最尊最上、甚深不可思議(ジンジン フカシギ)なりといふこと、世尊すでに証明しまします。衆生まさに信受(シンジュ)すべし。

このことから知りなさい。三帰の功徳は最尊 最上であり、甚深 不可思議であることを、世尊が既に証明されているのです。これを世の人々は、まさに信じ受け取りなさい。

十方の諸仏の名号(ミョウゴウ)を称念(ショウネン)せしめましまさず、ただ三帰をさづけまします。仏意の甚深なる、たれかこれを測量(シキリョウ)せん。

仏は竜たちに、諸仏の名号を称え念じさせようとなさらずに、ただ三帰を授けられたのです。この深い仏の心を、誰が推し量ることが出来ましょうか。

いまの衆生、いたづらに各各の一仏の名号を称念せんよりは、すみやかに三帰をうけたてまつるべし。愚暗(グアン)にして大功徳をむなしくすることなかれ。

今日の人々は、徒にそれぞれの一仏の名号を称え念じるよりも、早く三帰を受けるようにしなさい。愚かで三帰の大功徳を無駄にすることはいけません。

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