三時業(9)

もしこの説によらば、破僧さき、出血(スイケツ)のちなり。もし余説によらば、破僧出血の先後、いまだあきらめず。

提婆達多は、この説によれば破僧(僧団を壊す)が先で、出血(仏身から血を出す)が後になっていますが、他の説では、破僧と出血の前後は必ずしも明らかではありません。

また拳をもて、蓮華色比丘尼(レンゲシキ ビクニ)をうちころす。この比丘尼は阿羅漢(アラカン)なり。これを三無間業(サン ムゲンゴウ)をつくれりといふなり。

また提婆達多は、拳で蓮華色比丘尼を打ち殺しました。この尼僧は阿羅漢でした。これが提婆達多のつくった三つの無間業です。

破僧罪につきては、破羯摩僧(ハ コンマソウ)あり、破法輪僧(ハ ホウリンソウ)あり。

破僧罪(僧団を壊す罪)には、破羯摩僧(僧の作法に異を唱えて僧団を壊す罪)と、破法輪僧(仏の教えに異を唱えて僧団を壊す罪)があります。

破羯摩僧は、三洲(サンシュウ)にあるべし、北洲(ホクシュウ)をのぞく。如来在世より、法滅のときにいたるまでこれあり。

破羯摩僧は、須弥山を中心とする全世界の中で、北方を除く東方 南方 西方の各世界にあります。これは如来(釈尊)在世の時から仏法が消滅する時まであります。

破法輪僧は、ただ如来在世のみにあり、余時はただ南洲(ナンシュウ)にあり、三洲になし。この罪最大なり。

破法輪僧は、如来在世の時だけにあり、他の時代では人間の住む南方世界だけにあって、東方 西方 北方世界にはありません。この罪は最大の罪です。

この三無間業をつくれるによりて、提婆達多(ダイバダッタ)、順次生(ジュンジショウ)に阿鼻地獄(アビジゴク)に堕す。かくのごとく五逆つぶさにつくれるものあり、一逆をつくれるものあり。提婆達多がごときは、三逆をつくれり。ともに阿鼻地獄に堕すべし。

この三つの無間業をつくることで、提婆達多は順次生(次の生)に阿鼻地獄に堕ちました。このように五逆罪のすべてつくる者もあれば、その一つをつくる者もありました。提婆達多などは三つの逆罪をつくりましたが、これらは皆 阿鼻地獄に堕ちるのです。

その一逆をつくれるがごとき、阿鼻地獄 一劫(イッコウ)の寿報(ジュホウ)なるべし。具造五逆(グゾウ ゴギャク)のひと、一劫のなかに、つぶさに五報をうくとやせむ、また前後にうくとやせむ。

一つ逆罪をつくれば、阿鼻地獄の中で一劫という長い寿命の報いを受けるのです。五つ逆罪をつくる人は、その一劫の中で、全て五逆の報いを受けるか、又は前後の生にその報いを受けることでしょう。

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