出家功徳(24)

あきらかにしりぬ、たとひ閻羅王(エンラオウ)なりといへども、人中の生をこひねがふことかくのごとし。すでにうまれたる人、いそぎ剃除鬚髪し、著三法衣して、学仏道すべし。これ余趣(ヨシュ)にすぐれたる人中の功徳なり。

これによって明らかに知られることは、閻羅王(閻魔)でさえも、このように人間に生まれることを願っているということです。ですから、既に人間に生まれた人は、急いで鬚 髪を剃り落として出家し、三種の法衣を着けて仏道を学びなさい。出家は、地獄界、餓鬼界、畜生界、修羅界、天上界などより優れた人間界の中の功徳なのです。

しかあるを、人間にうまれながら、いたづらに官途世路(カント セイロ)を貪求(トング)し、むなしく国王大臣のつかはしめとして、一生を夢幻にめぐらし、後世(ゴセ)は黒闇におもむき、いまだたのむところなきは至愚(シグ)なり。

それなのに、人間に生まれながら、徒に役人としての処世を貪り、空しく国王大臣のお使いとして一生を夢幻の中に過ごし、後世は暗黒に向かって、頼るところも無いのでは甚だ愚かです。

すでにうけがたき人身をうけたるのみにあらず、あひがたき仏法にあひたてまつれり。いそぎ諸縁を抛捨(ホウシャ)し、すみやかに出家学道すべし。国王大臣、妻子眷属は、ところごとにかならずあふ。仏法は、優曇華(ウドンゲ)のごとくにしてあひがたし。

既に受け難い人間の生を受けただけでなく、会い難い仏法に会うことが出来たのです。ですから、急いですべての事を投げ捨てて、出家して仏道を学びなさい。国王 大臣 妻子 眷属は、その所ごとに必ず会うものですが、仏法は、三千年に一度咲くという優曇華のように会い難いものです。

おほよそ無常たちまちにいたるときは、国王、大臣、親昵(シンジツ)、従僕、妻子、珍宝たすくるなし、ただひとり黄泉(コウセン)におもむくのみなり。おのれにしたがひゆくは、ただこれ善悪業(ゼンアクゴウ)等のみなり。

およそ無常(死)がにわかに来る時には、国王 大臣 親友 下僕 妻子 財宝などで助けてくれるものはなく、ただ一人で黄泉路へ向かうばかりなのです。その時の自分に付いて来るものは、専ら自らの善業や悪業などだけです。

人身を失せんとき、人身ををしむこころふかかるべし。人身をたもてるとき、はやく出家すべし。まさにこれ三世の諸仏の正法なるべし。

自分が命を失う時には、命を惜しむ心が深く起こることでしょう。ですから、命の保たれている間に早く出家しなさい。まさにこれは、過去 現在 未来に居られる諸仏の正法なのです。

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